港湾産業を形成する業種・団体・協会
1. 港湾を維持・サービスする業種
- ⑴ 船舶給水:船舶への清水補給業務。
- ⑵ 船舶給油:船舶の燃料(重油、LNG)補給業務。
- ⑶ 港湾曳船:大型船の入出港のサポート、海上警備、海上防災。
- ⑷ 廃棄物・廃油回収:船舶から排出されるゴミや廃油を回収する業務。
- ⑸ 通船:港外やブイに停泊する本船と陸の間を行き交う人の送迎業務。
- ⑹ 水先人送迎:パイロットのための送迎業務。
- ⑺ 水先人:船舶が港湾へ出入りする時に、船長に代り又は補佐して船を安全に運航し誘導する者。
- ⑻ 綱取り外し:本船係留索の取り外し業務。
- ⑼ ポートラジオ:沿岸地域での船舶との通信用VHF海岸局として通信業務を担う。
- ⑽ マリンサプライヤー(シップチャンドラー):船舶への船具、資材、船食などの納入業務。
- ⑾ 船舶代理店:船舶の入出港各種手続き、船員のアテンド等の業務。
- ⑿ 港湾運送事業:輸出入貨物の揚げ積み作業、通関、輸送、保管業務。
- ⒀ 陸上・海上輸送:輸出入貨物の陸上・海上輸送業務。
- ⒁ 貨物保管:貨物を安全に保管する業務。(コンテナターミナル、上屋、倉庫、はしけなど)
- ⒂ 本船清掃:船舶の艙内を清掃する業務。
- ⒃ 水上タクシー:陸と沖合に停泊する船とを結ぶ連絡船。
- ⒄ 港内清掃:清掃船にて港湾の浮遊物などを回収する業務。
- ⒅ 福利厚生施設:宿泊施設、病院、理髪店、食堂、スーパーなど船員や港で働く人のために営業する施設。
- ⒆ 広報宣伝:港のセールス、観光案内、振興のために活動する団体。
- ⒇ 港湾整備:港湾施設の補修点検、航路の浚渫などを行い、良好な状態を維持する業務。
2. 港湾に関係する団体 (全国的組織)
- ⑴日本港運協会
- ⑵ 日本港湾タグ事業協会
- ⑶ 港湾貨物運送事業労働災害防止協会
- ⑷ 日本関税協会
- ⑸ 日本港湾福利厚生協会
- ⑹ 日本水先人会連合会
- ⑺ 日本通関業連合会
- ⑻ 日本商工会議所
- ⑼ 日本海運貨物取扱業会
- ⑽ 全国港湾労働組合連合会(全港湾)
- ⑾ 日本船舶代理店協会
3. 港湾物流を支える業者
港湾での仕事を業務別に分類すると、次のようなものがある。
⑴ 船積み、船卸し業務 (海運貨物取扱業:荷主代行)
荷主の依頼を受け、輸出入貨物の通関、船積み手続き、船卸し手続きなどを行い、貿易実務を 行う業務。
⑵ 本船の入港・出港手続き業務(船舶代理店業)
船会社・船長の代理として、船を安全に入出港させるための緒手配を行い、遅延なく次の港へ 向けて出港させる業務。
⑶ 港湾運送事業法に関わる業務(港湾運送事業)
船社・荷主の依頼を受け、輸出入貨物を本船から陸揚げ、本船へ船積みする業務。 様々な業務があり、第1種から第7種に分かれている。 更に、港湾運送の補助的行為として、港湾運送関連事業がある。
⑷ 国内輸送業務(陸上・内航・鉄道輸送事業)
港湾は外国貨物だけが行き交うわけではなく国内貨物も取り扱われる。 輸出される前の貨物、輸入されてからの貨物、純粋に国内輸送される貨物などが港湾施設を 経由して行き交う。
⑸ 倉庫業務(港湾倉庫)
一般的な倉庫の役割は貨物の保管であるが、港湾の倉庫は臨海部に位置し、輸出入貨物を扱っているため、貨物の保管を本来の目的として業務を行っていない。 流通倉庫として一時的に貨物が置かれているため、長期の保管は少ない。
⑹ メンテナンス業務
港湾では様々な荷役機器が稼働している。機器は定期的な検査が法律で定められており、 機械であるため、時に故障も生じ、都度適正な対応が必要となる。
⑺ 曳船サービス事業
本船が湾内や港内で安全に航行し、係船場所でも事故なく離着岸できるように、タグボートが 活躍する。特に岸壁での離着岸は、1秒当たり数センチの速度で本船を微動させ、岸壁への 衝突や防舷材などへ衝突を防ぐ繊細な動きが求められる。
4. 港運業界での業務
⑴ 本船荷役監督業務
本船荷役の現場最高責任者。船会社及び本船側の要請に基づき、荷主又は荷受人の要望と合わせ、貨物の完全な受渡しに係る荷役作業を遂行するための荷役計画を立案し、必要とする諸手配、荷役機材及び作業員などの手配を行い、高度な技術と経験に基づき作業全般を指揮監督し、円滑な荷役推進を図り、本船の即発と荷役の完遂を尽くす。
⑵ コンテナターミナル業務
コンテナ船専用岸壁での業務。オペレーション、メンテナンス、受渡し、保税、CFS業務などがある。
⑶ 船舶代理店業務
船社・荷主の代理者として各港における入出港船舶に係わる諸官庁への許可申請手続き、離着岸に必要な水先人、タグボート、綱取り放しなどの手配、各関係先への連絡、荷役協定書の作成など業務は多岐にわたる。
⑷ 海貨通関業務 (限定1種)
荷主(輸出者・輸入者)の委託を受け、港湾地区で貨物の船積み手続き、貨物の引き取り、搬出入、運送、荷役(はしけ+沿岸限定)などを行う。
⑸ 港湾荷役業務(船内・沿岸)
船内荷役、沿岸荷役、はしけ荷役などを行う。
⑹ 倉庫業務 (港湾倉庫)
依頼主より委託を受けた物品を倉庫に於いて保管する業務。原料から製品、冷蔵・冷凍、危険品など多種多様の物品を取扱う。
⑺ 国内輸送業務 (貨物利用運送事業)
顧客より委託された貨物を、トラックやトレーラによる陸上輸送、内航船を利用した海上輸送、鉄道を利用したレール輸送などを駆使して、北海道から沖縄まで日本国内のあらゆる場所へDoor To Doorの海陸一貫輸送サービスを行う業務。
⑻ 荷役機器保守整備業務
港湾で使用される荷役機器、車輛系荷役運搬機械などの保守・整備作業を行う業務。
⑼ 検数人
輸出貨物の積込み、輸入貨物の船卸しなどに際して、その貨物の特定(品 名、荷印、荷姿、荷番)、個数(数量)の計算、受取りの証明などを行う。
⑽ 鑑定人
船積貨物の状態を確認し、海上輸送に適した梱包、積み方であるかを証明する。また、港湾での運送作業中に貨物に損害が生じた場合に、貨物の損害の調査、原因の鑑定を行う。
⑾ 検量人
船社・荷主の委託を受け、船舶による輸出入貨物の積込み又は陸揚げの際に、貨物の重量や容積の計算や証明を行う。
⑿ 関連事業業務
船貨の固定・固縛作業、船積貨物の荷造り若しくは荷直し作業、船舶からの貨物の取卸しに先行し若しくは後続する船艙の清掃作業、 港湾において船積貨物の警備作業などを行う。
⒀ 情報システム業務
企業内で使用するITシステムの管理・メンテナンス及び開発を担う。港湾の企業では、現場部門、管理部門に区別なく様々な業務をシステム化し、効率の良い業務を行っている。
⒁ 大型荷役機械運転業務
港湾に於ける大型荷役機械のガントリークレーン、トップリフター、トランスファークレーン、クラブトロリ式アンローダー、リーチスタッカーなどの運転操作。
⒂ 海外駐在業務
国際複合輸送、国際海上物流などの言葉が現れて久しい港運業界であるが、今や港運事業に携わる多くの企業が単独ないし船社・荷主との連携を持ち、海外へ進出して業容の拡大を図っている。
出典:柴原優治2024年著書「港湾で活躍する人材の育成」(付録1 港湾業界での職務)