SHIPS for America Act、関税とUSTRの港湾使用料に加えコスト複雑化
貨物輸送市場情報プラットフォームのXeneta(ノルウェー)は5月6日、米議会へのSHIPS for America Actの再提出は、2025年に海上コンテナの荷主が直面する複雑さと不確実性を示す新たな事例となり、米国に貨物を輸入する際に考慮すべき手数料がさらに増える中、サプライチェーンのコストと回復力について行動を取ることがますます難しくなっていると指摘した。
米国通商代表部(USTR)は2025年2月に発表した、米国の港湾に入港する中国船社の運航船と中国での建造船に対する入港手数料措置案には、中国の造船所で建造した船舶の発注比率に基づく手数料が含まれていたが、4月18日に修正案が発表された際には、この要素は含まれておらず、業界全体が安堵した。
しかし、USTRの入港手数料とはまったく別のスキームである米国の繁栄と安全のための造船・港湾インフラ(SHIPS)法(SHIPS for America Act)が先週、米議会に再提出され、特定の中国造船所への発注残の割合に基づき、(国籍を問わず)船社に課される手数料が盛り込まれたからだ。この手数料は2024年12月に法案が提出されたときには含まれていなかった。
この手数料は中国船社が所有または運航する船舶、および中国で船籍登録された船舶に対するトン当たり5米ドル、また、発注済みの新造船の50%以上が、指定された「懸念される外国の造船所」で建造されている場合、中国以外の船社が運航する船舶にもトン当たり5米ドルが課される。第一段階では、中国国営造船会社が所有するすべての造船所が含まれ、将来的には、このリストにさらに多くの造船所が追加される可能性があり、影響を受ける造船所に25%から49%の船舶を発注している非中国の運航船社は、トン当たり3.5米ドルを負担、さらに、懸念される造船所で建造または修繕中の船舶が50%以上の既存船隊を持つオーナー/オペレーターには、トン当たり1.25米ドルの違約金が課され、これらの手数料は累積ではなく、最も高いカテゴリーが適用されるが、USTRの入港手数料に上乗せされることになる。
例としてCOSCOが所有・運航し、中国で建造した”COSCO Shipping Denali”(14, 500TEU)は純トン数84,300トンで、USTRの入港手数料として米国の港に寄港するたびに420万米ドルを支払い、また、SHIPS for America Actに基づき、さらに40万米ドルが加算される。COSCOがCMA CGM(仏)、Evergreen(台湾)、OOCL(香港)と構成するOcean Allianceメンバーであることを考えると、状況はより複雑になる。
USTRの入港手数料は10月中旬まで発効しないため、船社やアライアンスは影響を軽減するために船隊を再編成する時間を得ることができ、おそらく、CMA CGMとEvergreenが所有・運航する船舶を北米航路に投入、COSCOとOOCLが所有する船舶を他の航路に投入することになるが、SHIPS for America Actは、CMA CGMが新造船の35%以上を中国国営造船所に発注しているため、同社の船舶がトン当たり3.5米ドルの課税対象となることから、例えば、”CMA CGM Bali”(15,294TEU)は、USTRの提案では入港手数料が発生しないにもかかわらず、SHIPS for America Actの下では20万米ドルの手数料が発生することになり、OAが船隊の再編成に着手しても、完全に手数料を回避するのは不可能なことかもしれない。
Xenetaでは、船社がUSTR手数料のコストをどのように転嫁するのかについては、SHIPS for America Actに関連する手数料も考慮しなければならなくなったことから、潜在的な追加コストはさらに高くなり、SHIPS for America Actの財務的影響はUSTRの手数料より低いが、吸収すべきもう一つのコストであると指摘、さまざまな船社やアライアンスが手数料にさらされる複雑さは、荷主やフォワーダーなどが次の運賃契約を締結する際に織り込んでおく必要があるとしている。
さらに、SHIPS for America Actの第415条では、制定5年後から、中国からの貨物(トン数で測定)の1%を米国船で輸送しなければならないと定めている。この要件は毎年1%ずつ増加し、10%となり、これに従わない荷主には、米国船で輸送した場合のコストと便宜置籍船(FOC船)で輸送した場合のコストの差額以上の罰金が科されることになり、これが実際にどのように機能するかは不明だが、もし実現すれば、荷主にとっては財政的にも管理上も頭痛の種となるだろうとしている。