AI導入で世界貿易額2040年までに40%増 WTO予測
日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、世界貿易機関(WTO)は、年次報告書「世界貿易報告(World Trade Report)」の2025年版を発表、人工知能(AI)が世界貿易と経済成長に与える影響を多角的に分析、AIの導入によって、2040年までに世界の財・サービス貿易額は34~37%増加、特にデジタルサービス貿易額は42%増加する予測だ。また同年までに、世界全体のGDPは12~13%増加すると見込まれている。
AIツールは、サプライチェーンの可視化、通関手続きの自動化、言語障壁の低減などを通じて貿易コストを削減し、中小企業のグローバル市場への参入拡大に貢献している。WTOと国際商業会議所(ICC)の共同調査では、AIを活用する企業の約90%が貿易活動において利益を得ており、56%がリスク管理の改善を報告した。
他方で、AIの導入や活用度合いには格差があり、WTOのンゴジ・オコンジョ=イウェアラ事務局長は「AI技術へのアクセスとデジタル貿易への参加能力は依然として極めて不均等だ」と指摘する。特に、デジタルインフラの整備やAI教育、国の政策整備の遅れなどにより、低所得国や中小企業でAI導入が進みにくい現状がある。
貿易措置の存在も、AIの導入や活用を阻む一つの要因となっている。高所得国や上位中所得国を中心に、AI利用を支える財(AI-enabling goods)に対する数量制限措置の導入が活発化しており、その数は2012年の130件から2024年には約500件に急増した。また、低所得国ではこれら財に対する関税が最大45%に達するなど、アクセスを制限している。こうした状況を踏まえ、あらゆる国・企業におけるAIの普及と経済成長を実現するために、開放的で予測可能な貿易政策の必要性を指摘している。AI利用を支える財の貿易額は2023年に2兆3,000億ドルに達したと推計、貿易を通じてこれら財へのアクセスを確保することは格差是正の重要な推進力となると指摘している。